懐かしい「サザエさん」の時代

映画「ALWAYS三丁目の夕日」が高度経済成長期を遂げる昭和30年代後半を舞台にしていた事はお話しましたが、他にも「サザエさん」「ちびまる子ちゃん」など国民的漫画といっていい作品もこの頃を舞台にしているものです。平成24年現在ではもう半世紀も昔の事ですよね。それを舞台にした漫画がアニメ化され、現在でも間断なく放映され、人気を集めているというのはちょっとした驚きですね。それもどちらとも物語中心というよりは普段の生活描写をベースとしたものです。作者独特の鋭い視線がそこに有る事はもちろんですが、その時代背景というのも人気のポイントとなっているのではないでしょうか?

「サザエさん」は実は新聞連載の4コマ漫画がその原作なんですね。漫画連載が始まったのが昭和20年の終戦後すぐの時代でした。初めは作者の長谷川町子さんが福岡にいたので舞台も福岡だったんですが、途中で東京に引っ越したので、そのまま舞台が東京に移ったんですよ。そこからテレビアニメになったのは昭和44年と、かなり遅い時期でしたが、それが今でも続いているという事ですから、原作含めると戦後の日本を一貫して、その生活を描いてきた作品でもあるんですね。

でも一番舞台の中心となっている時代は昭和30年~昭和40年代ようです。家族構成・家庭内の風景にもそれは色濃く出ていますよね。サザエさんの旦那さんであるマスオさんは、婿養子の代名詞で定着していますし、「サザエさん」の家族は当時の日本の家族を代表していたものだったんですね。サザエさんに良く出て来る風景として近所の人が不在の時に、郵便物を預かったり、頂きものが有ったら、お裾分けするなど、現代の家庭ではなかなか出来る所が少ないのではないでしょうか。プライバシー問題なども有りますが、信頼関係による垣根の低さが昭和の生活の魅力だと思います。

生活の細々したところでいうと、仕事では週休2日制を取っている所は珍しく、週1日日曜日だけので休みの会社が多かったですよね。また携帯電話なんてものも無かったですから待ち合わせで場所と時間を間違えて待ちぼうけ、みたいな事も良く話で出てきましたよね。公衆電話に行列が出来て、あまりの長電話に怒って傷害事件が起きた何て事件も有りました。テレビのチャンネルもリモコンなんて無く、テレビに取り付けて着脱可能でしたので、そのチャンネルの取り合いが殺人事件になったなんて事件も世の中を騒がしました。まあその時代なりの問題もあったんですね。

ウイスキーなんかも高かったですね。贅沢税と言って舶来品(海外製品)の高級品には税金が高く掛けられていたんですね。ヘネシーやレミーマルタンなんていうブランデーも今では多少高いにしても誰でも買えちゃう値段ですが、その頃は中流のサラリーマンでも高くて簡単に手の付けれらない品物でした。入れる時に(高級品なので)手が震えるなんて話を良く聞きました。

昭和41年ビートルズが初来日し、武道館でライブを開きます。この時から武道館はミュージシャンの夢の舞台・聖地になる訳ですが、ビートルズは日本の文化に大きな影響を与え、特に若者に与えた衝撃はとても大きかったようですね。まだまだ文化的に日本は遅れていて、これから何でも新しい事がやれるっていう雰囲気が有ったのではないでしょうか。当時青年時代を送っていた人が良く言う言葉ですが、あの頃はみんな貧乏だった、でもみんな貧乏だったんで、それが少しも恥ずかしくなかった。お金が無い時に貸したり借りたりするのもごく当たり前の事だったんですね。それはそれで羨ましい事だと思いませんか。